大阪歯科大学 教員情報      
     


発表言語 日本語 
発表タイトル 歯肉iPS細胞に由来する間葉系幹細胞様細胞からの骨芽細胞様細胞への誘導. 
学会名 第556回大阪歯科学会 
発表形式 口頭 
発表者・共同発表者 中山 雄司, 橋本 典也, 本田 義知, 松本 尚之 
発表年月 2017/12/09 
開催地 枚方市 
学会抄録  
概要 口唇口蓋裂や歯周病により生じる顎顔面の骨欠損を再生する治療法として、自家骨移植が広く行われている。しかしながら侵襲性や、収集できる骨量に制限があることから、細胞を用いた組織工学的再生医療による、安全で確実な骨再生が望まれている。間葉系幹細胞(MSC)は組織工学における自己治療のための有用な細胞源であるものの、増殖能力に制限があり、必要量を採取するには生体に対する侵襲が大きい。われわれは人工多能性幹細胞(iPS)細胞からMSC様細胞(MSLC)を樹立することに成功した。本研究では、MSLCを骨芽細胞様細胞へと分化させ、その骨芽細胞分化挙動について検討したのでここに発表する。
 歯肉iPS細胞はマトリゲルを用いてフィーダーフリー条件下で作製した。作製したMSLCに対してフローサイトメトリー解析を行った。また安全性試験として未分化マーカーLin-28 の発現を調べた。MSLCをダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に10%FBS、10 ng/mL 線維芽細胞増殖因子を含む培地で培養後、DMEM に10%FBSと骨芽細胞分化因子(50 μM アスコルビン酸-2-リン酸、10 mM β-グリセロリン酸、100 nM デキサメタゾン、100 ng/mL BMP-2)を含む培地に交換し、骨芽細胞様細胞への分化誘導を行い、分化誘導後1、2、3週間で細胞を回収した。骨芽細胞分化因子を添加しない群をコントロール群とした。骨芽細胞様細胞への分化の評価は、Real-time PCR(ALP,Runx2,COL1-A1,OCN)、アルカリホスファターゼ(ALP)活性、オステオカルシン(OCN)発現により行った。
 各フローサイトメトリーの結果、MSC特異的マーカーの発現(CD105、73、44)を認めた。安全性試験ではLin-28の発現は認められなかった。またMSLCから分化誘導した細胞はReal-time PCRにおいて、コントロール群に比較して、BMP添加群では、ALPは1、3週で、COL1-A1は1週で最も高かった。Runx2, OCNでは上記マーカーと異なる発現挙動を示した。BMP添加群のALP活性では2週で最も高い発現を示し、3週目では発現が低下し、OCNでは3週目で高い発現を示した。フローサイトメトリーの結果、MSLCはMSC同様表面マーカーを持った細胞であり、未分化の細胞が極めて少ないことが明らかとなった。さらにMSLCの骨芽細胞様細胞への分化が確認できた。
MSLCはMSCより増殖能力が高く、MSCと同様の分化能があるため、広域な組織再生医療のための重要なツールになると考えられる。